ストック・オプション

『「ストック・オプション」とは、自社株式オプションのうち、特に企業がその従業員等に、報酬として付与するもの』をいいます。

ここで、「自社株式オプション」とは、『自社の株式を原資産とするコール・オプション(一定の金額の支払により、原資産である自社の株式を取得する権利)』のことを言い、新株予約権がこれにあたるため、一般的に 「ストック・オプション」 とは、企業がインセンティブ報酬として、従業員・役員等に付与した新株予約権のことを指すと言えます。

(『 』部分は、企業会計基準委員会「ストック・オプション等に関する会計基準」からの抜粋)

1⃣ 税制適格ストック・オプション

税制適格ストック・オプションとは、ストック・オプション税制の適格要件を満たす新株予約権で、従業員・役員(監査役を除く)等に付与されたものを言います。

通常、(税制非適格の)ストック・オプションの付与を受けた個人は、株式売却による資金化前である新株予約権の権利行使時に、権利行使時の経済的利益が給与所得課税(総合課税)の対象となるのに対し、税制適格ストック・オプションでは、課税が権利行使後に発行された株式の売却時点まで繰り延べられ、株式の譲渡時に権利行使時の経済的利益とキャピタルゲインを合わせて譲渡所得課税(申告分離課税)の対象とするため、被付与者にとっては税制面で有利となります。

税制適格要件

発行価額:会社法の決議に基づき、金銭の払込みをさせないで発行された新株予約権であること(無償発行)

付与対象者:発行会社若しくは発行会社が100分の50を超える出資関係を持つ法人の取締役、執行役若しくは使用人である個人若しくは権利承継相続人又は特定従事者(中小企業等経営強化法に規定する認定新規中小企業者等に該当する株式会社が認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画に従つて行う社外高度人材活用新事業分野開拓に従事する社外高度人材である個人)。

但し、大口株主及び大口株主の特別関係者を除く
上場株式:付与決議のあつた日において発行会社の発行済株式の総数の10分の1を超える数の株式を有していた個人
上記以外の株式:同3分の1を超える数の株式を有していた個人

権利行使期間の制限:新株予約権に係る付与決議の日後2年を経過した日から、付与決議の日後10年を経過する日までの間に権利行使を行わなければならないこと

権利行使の年間限度額:新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が12百万円を超えないこと

権利行使価額の制限:新株予約権の行使に係る一株当たりの権利行使価額が、発行会社株式の契約締結時における一株当たりの価額に相当する金額(時価)以上であること

譲渡の禁止:新株予約権については譲渡をしてはならないこと、とされていること

株式の保管委託:新株予約権の行使により取得する株式につき、発行会社と金融商品取引業者等との間であらかじめ締結される管理等信託に関する取決めに従い、株式取得後直ちに発行会社を通じて、当該金融商品取引業者等の振替口座簿に記載若しくは記録を受け、又は、当該金融商品取引業者等に保管の委託若しくは管理等信託がされること

※令和3年度時点

資金化前に課税が発生する税制非適格のストック・オプションでは付与対象者の税負担のみならず、資金負担が重くなるため、インセンティブプランとして利用しづらい側面があります。そのため、税制適格となるストック・オプションは、上場会社や将来上場を目指すスタートアップ企業においても、「大口株主以外の役員や従業員向けのインセンティブプラン」として、汎用的に利用されています。

税制適格ストック・オプション発行時の評価

税制適格とするためには、権利行使価額が時価以上であることが求められるため、権利行使価額を決定するにあたり、発行会社株式の契約締結時における株価(時価)の算定が必要となります。

Next D では、ストック・オプションの発行目的やインセンティブプランを考慮して、第三者機関としての上場株式・非上場株式の株式価値の評価を行います。

株主資本価値評価(株価算定)についてはこちらをご参照ください。

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2⃣ 有償ストック ・ オプション

有償ストック・オプションとは、公正な評価額による払込金額をもって企業がその従業員等に新株予約権を発行するものです。

有償新株予約権は、報酬としての無償発行のストック・オプションとは異なり付与対象者からの払込があることから、投資機会の提供という性質を有しています。そのため、ストック・オプションというのは相応しい呼び方とはいえないという議論もありますが、役員・従業員等に対して株価上昇に対するインセンティブ目的で発行する側面等もあり、一般的には有償ストック・オプションと呼ばれています。

有償ストック・オプションは通常、業績条件や株価条件といった権利確定条件が付されます。これは希薄化による株式価値への負の影響を払拭するための既存株主に対する配慮であるとともに、新株予約権の評価を下げる効果により付与対象者の資金負担を低く抑えることも考慮して設定されることになります。

有償ストック・オプションは付与対象者における資金負担が必要となるため、広く従業員・役員に対して付与されることは少なく、一般的には、税制適格ストック・オプションの対象とならない大口株主や監査役等に対するインセンティブとして利用されます。

従業員・役員向けとして新株予約権の公正な評価額を低く抑えるために、複雑な権利確定条件を付した新株予約権を設計するケースも増えているようですが、プラクティス重視で必ずしも理論的背景が確立していない方法によって評価していることも多く見受けられます。不適切な評価方法により、発行価額が税務上で公正評価と認められずに、後から付与対象者に多額の税務負担が発生することがないよう、新株予約権の設計には慎重な判断が必要です。

有償ストック ・ オプション発行時の評価

有償ストック ・ オプションは、通常、税制適格ストック・オプションと同様に、権利行使価額を付与時点の時価以上とするため、権利行使価額を決定するにあたり、発行会社株式の契約締結時における株価(時価)の算定が必要となります。また、公正な評価額による払込となるため、発行する新株予約権の評価が必要となります。

Next D では、有償ストック・オプションの発行目的やインセンティブプラン、新株予約権の発行条件等を考慮して、第三者機関としての上場株式・非上場株式の株式価値の評価、及び、新株予約権の評価を行います。

株主資本価値評価(株価算定)についてはこちらをご参照ください。

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